雨の日曜日、マリンメッセ福岡。
ASKAのソロツアーである「ASKA SYMPHONIC CONCERT TOUR 2008 "SCENE"」に行ってきました。 今日のライブはちょっと衝撃的だったので、長めに書きたいと思います。 各地の地元交響楽団をバックにASKAが歌い上げるというこのコンサートツアー。 ASKAの素晴らしい歌声に存分に酔いしれることを期待して集まった人々で会場は満員。 定刻から15分遅れてASKAが登場し、1曲めの「Birth」を歌い始めた時点で、早くも違和感が生じました。 (・・・あれ?ASKAの声がオケに負けている・・・) 音響が悪いのか、それとも始まったばかりで声が出てないだけなのかとも思ったけれど、2曲目「Girl」、3曲目「迷宮のReplicant」と続くうちにますます不安は強くなります。 高音が出ない。低音も割れる。ASKAの歌唱の特長である強弱がまるでなく、やけに平坦。 (これは、いつもと違う・・・) 会場のお客さんにも次第にかすかなざわめきが広まりだしました。 そんな状態でMCに入る。ASKA自身がいちばん焦っていたでしょうに、彼の第一声は、 「うーん、おなかが減っているのかな」。 これで観客がどっと笑い、緊張しかけていた会場の空気がほっと緩みました。 並の歌手なら、ここで「今日、ちょっと調子が悪くて、声が出ないんだよ、ごめんねー」とか言っちゃうじゃないかな。少なくとも、私が歌手だったら絶対に言っちゃいそう。謝って、不調を認めて訴えて、「頑張ってー」「大丈夫ー」とかファンから言われたくなっちゃいそう。 それからもステージは続きましたが、ASKAの声の異状はだんだん誤魔化しようがないほど明らかになっていきました。 バックコーラスもいない、派手な演出もない、オケを背負ってたったひとりで歌うASKAの声が出ない。何とか絞り出そうとするけれど、かすれ声さえ出ない場面も出てきました。 そうなると、ASKAが支配しきれない会場の集中力がだんだん散漫になっていく。 立ち歩く人も出始めて、中盤あたりでは「これは失敗だ」という空気が蔓延していました。 私も、(これは聴いてるほうがつらいな~、ASKAさんも途中でやめちゃうかもしれないな、なんといっても、自分の歌が自分で許せないんじゃないかな)と思いつつ聴いていました。 普段が素晴らしいだけに、余計に痛々しさが増す。残酷だけどそれが正直なところ。 初めのうちは、歌うASKAの表情をアップで捉えていたカメラも徐々に引き気味になっていって、ASKAも間奏中は背中を向けてドリンクを喉に流し込み続けていました。 それでもASKAはやめませんでした。マイクを握りしめ、思いっきり背を反らして何とか声を絞り出そうとし、オーケストラに飲み込まれながらもひとりで歌い続けました。 「僕はこの瞳で嘘をつく」「HEART」では、高音のサビが完全に空白になってしまった。 ASKAはもはやドリンクを左手に握りしめたまま、それでも力を尽くして歌を続けました。 ASKAの気迫に押されるように、ざわついていた会場はいつしか静まり返っていました。 私も、気づけばASKAのぎりぎりの声を息を飲んで追っていて、完全に集中していました。 「月が近づけば少しはましだろう」を気力を振り絞るようにして歌うASKA。 ひとつASKAがサビを歌い終えるたびに会場から静かな拍手が湧く。もはや「絶唱」というに近いASKAの歌声。その恐ろしいほどの気迫が完全に会場を支配していました。 続けて「けれど空は青」を歌いきると、「ASKAー」「アスカさーん」と、励ましとも悲鳴ともつかない歓声が一斉に降り注ぎました。男性の声も多かったなあ。 そんななか、ASKAはじっと頭を下げていましたが、やがてゆっくりとマイクを掴みました。 「えー、この期に及んでまだ正面から受け止めようか、笑いでかわそうか悩んでるわけですが(笑)もう、このままいかせて」 ラストは「PLEASE」。この選曲は意外だったけど、一音一音かみしめるように歌うASKAさんに不覚にも涙・・・。(「クララが立った!」の声が脳内でリフレイン・・・) できることなら万全の歌声で聴きたかったけど、最後まで「調子が悪い」と口にせず、一度もステージを空けることなくオーケストラを背負い続けた姿勢に心から拍手を贈りました。 だから、深々と頭を下げてステージを後にしたASKAが、アンコールの拍手に応えて再度登場したときは、「いや、もうこれ以上無理して歌わなくていいッス」と本気で思いました。 拍手が鳴り止むのを待って、完全に潰れたかすれ声で話しかけるASKA。 「えー、こんなに声の調子がいい日は生まれて初めてでした」 どっと笑う観客。惜しみなく送られるお疲れさまの拍手。 「歌いながら、しみじみと、ステージは孤独だ、誰も助けてくれないと思った」 笑いながらも、本当にそうだろうなあとしみじみ頷きました。 「今日、初めて来てくれた人もいるよね。ASKAはこんなもんだと思われると悔しいね」 おどけた口調だったけど、本心だろうと心から思いました。 そして、ASKAが言いました。 「みんな、今日のチケット捨てないでいて」 冗談と思い笑う人、え?と、意味をはかりかねて首をかしげる人。ざわめく会場。 「もう一回、やらせて」 えー!? まさかの再演宣言!しかも、まがりなりにも最後までやり切った後での再演宣言!! どよめきから一気に歓声へと変わる会場。 「九響さんの予定もあるからまだ日程は分からないけど、もう一度、ぜひ聴いて」 「あ、でも貯金ないからあと一回ね~(笑)」 ASKAのプロとしての29年間の重み、ボーカリストとしての強烈な自負を、笑いの中に感じとった瞬間でした。すごい、と思った。いや、鳥肌が立ちました、本当に。 ちなみにその後、CHAGE&ASKAは来年30周年になるけどツアーはしないこと、CHAGEとの音楽の方向性の違いから、今後のチャゲアスの予定は全くの白紙であることなどが告げられ、最後の最後はゆっくりとしたアカペラで「君が愛を語れ」を歌いきって、終了。 幕が下りた後、主催者から正式に、改めて再演を行うこと、今日のチケットが引換券の代わりとなるので大事に取っておいてほしい、というアナウンスがあったのでした。 最初に予想していた感動とはかなり違ったけど、かなり感動的なライブでした。 ライブの醍醐味ってこれだよな・・・としみじみ。この感動、プライスレス★(←ばか)。 今度は間違いなく絶好調のASKAさんの歌声が聴けるでしょう。再演が楽しみです! -今日の曲目はこちら- 1.Birth 2.Girl 3.迷宮のReplicant 4.はじまりはいつも雨 5.good time 6.抱き合いし恋人 7.背中で聞こえるユーモレスク 8.帰宅 9.next door 10.蘇州夜曲 11.C-46 12.心に花の咲くほうへ 13.UNI-VERSE 14.僕はこの瞳で嘘をつく 15.Heart 16.月が近づけば少しはましだろう 17.けれど空は青 18.PLEASE (アンコール) 1.伝わりますか 2.君が愛を語れ ※ごめんなさい!アンコールの1曲目、「伝わりますか」でした。いつも「今でも」と混同しちゃう・・・。 ←長い。長すぎる。だって感動したんだもん
by saku_2425
| 2008-10-06 01:54
| 音楽をきく
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