私は弦バスが好きなよ。音じゃあ縁の下の存在じゃけど、ちゃんと力持ちなところをお客さんにしっかりと見てもらえるけえね。それに音でも共振いうのがある。聞こえんような音量でもしっかりした音程で弾いとれば、ほかの楽器と共振して楽器一本じゃあ出せん不思議な音色になって、それがお客さんを感動させる。 「吹奏楽」って群像劇にはもってこいの素材だよな~というのは以前から思っていたこと。 それぞれの楽器にそれぞれの鳴らし方があって、向き合い方があって、扱い方があって、それらが重なり合ったときに初めてひとつの「音楽」が生まれる。想像するだけで身震いするくらいエキサイティング。 ひとりひとりのパートって、それだけ弾いてても何が何やら分からないんだよね、合奏って。 それを初めて「合わせる」ときの興奮と喜びを思い出しました(昔、エレクトーンをやっていたので)。 この小説は、語り手が固定されているから群像劇ではありません。 群像劇ではないのに、部員たちの「共振」が全体を通して底辺に鳴り響いている。 そしてもうひとつ、大人になった部員たちに再結成の話が持ち上がる・・・という構成から、高校生の彼らと四十路の彼らが二重写しに重なり合う、その儚さや切なさ、苦さが作品に奥行きと深みを添えている。 過ぎ去らないとと見えないのが「青春時代」。そういう意味で、これは見事な「青春小説」です。 構成もストーリーも好みですが、この作品の骨格となる文体がまたいいです。カッコイイ! 非常にしなやかで自在、筋力のある文体。全体に余裕があり、それこそ手練れの演奏家が鳴らしているような文章です。弦楽器っぽい。緩急のつけかたも強弱のつけかたも好みです。 するする読んでいると、いきなりグッと盛り上がったりパッと断たれたり、いい具合に翻弄されました。 以前、同じ作家の『綺譚集』という作品を読んだのですが、同一人物とは思えん・・・。参りました。 ちなみに、この作品を薦めてくれた知人曰く、「登場人物紹介を読んだだけで、この作品が大好きになってしまう」そうです。確かに、「女性なのにジョン・レノンに似ている」とか「お洒落すぎて、お洒落に見えない」とか、笑ってしまうよ。この登場人物紹介には実に34名もの部員(教師含む)が登場しているのですが、全編読み終わった後にもう一度読み返してみるとまた感慨深いものがありましたよ。
by saku_2425
| 2009-11-03 22:57
| 本をよむ
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