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神様との賭け

週末は長崎で過ごしました。昼過ぎに福岡に戻り、夕方から仕事がらみのお食事会をこなして帰宅し、お風呂に入ってアイスを食べて今に至る。眠くて腰が砕けそうです。プールの後みたい。

退院して1ヶ月半、母はすっかり元気です。心配してくださった皆さんにお見せしたいくらい。
入院前から変わったことと言えば、運転免許を返上したので車の運転ができなくなったことくらい。でももともと歩くのが大好きな人なので今のところ何も不便は感じない様子です。もっと暑くなってくると少々心配ですが、バスもあるのでたぶん大丈夫でしょう。

むしろ良い方向へ変化したほうが目立って、ひとつはふっくらしてきたこと。入院時に較べて10キロ近く肥りました。と言ってもまだ40キロに満たないのだけど、彼女にしては上出来です(昔から太れない体質なのだ)。「ジーンズがきつくなった~」とこぼしてますが、それ、もともと子供用だからね。

そしてもうひとつは、父が献身的になったこと。そして両親の仲がよくなったことです。
母の3ヶ月に亘る入院中、娘(わたくし)が放っといたこともあって、見よう見まねで何とか一通りの家事をこなすようになっていた父。母が退院してからも、洗濯、食後の後片付け、床の拭き掃除、ごみ出し、庭の掃除は自分の仕事と認識しているらしく、週末は朝も早くからせっせと働いている。それも喜々として。

母もにこやかで楽しそう。子供の頃から「両親の会話はブリザードのようなもの」、という認識で育ってきた私にはちょっと恐ろしいくらいのほのぼの加減である。あなたたち誰?って感じである。

母親「(2階の父の部屋を覗いて)お父さん、お昼寝するならタオルケット持ってこようか?」
父親「(寝ぼけて)ん~?(飛び起きる)お母さんどこ行くの!?僕も行く!」
母親「え?1階だけど」

そんな会話を階下で本を読みながら聞いていて、さやかさんの本を強烈に思い出したりする。

さやかさんの本、『実録・パパは多重債務者(サイマー)!』はタイトル通りの内容で、怪しげな商売に手を出しまくって多重債務に陥っていくお父さんと、それに振り回されるお母さんとひとり娘・さやかさんを描いたノンフィクションです(読んでくれた方、買ってくれた方、アリガトウ!。
お父さんは次第に追い詰められて精神がどんどん荒んでいき、お母さんはリウマチの悪化もあって仕事を辞めざるを得なくなり、東京のさやかさんは両親の生活を支えるために必死で働くが、事態は悪化の一途を辿る一方。実家はゴミ屋敷となり、お父さんの暴走からお母さんを守るため、さやかさんは両親を離婚させてお父さんと絶縁するという選択をする。明るい筆致だけど本当にハードでシビアなひとり娘の奮闘なのです。

このまま家族は崩壊していくのだろう・・・と覚悟したとき、お母さんを最悪の事態が襲う。くも膜下出血で倒れたお母さん。駆けつけるさやかさん。病院でお母さんに付き添うのは、離婚はしたものの、近所に住んでいたお父さん。倒れる直前にお母さんがSOSを送ったのは、さやかさんではなく、お父さんだったのです。
そしてそこから予想もつかなかったお父さんの快進撃が始まります。

・・・まったく同じだなあ。もう、さやかさんと私は魂のふたごなんじゃなかろうか(笑)
さやかさんのお父さんはお母さんを助け、お母さんに頼られることで自信を取り戻していく。そしてさやかさんにも感謝され、必要とされることで自分の人生さえも立て直していくのです。
かたやお母さんの命、かたやお父さんの更正というかなりのハイリスク・ハイリターンの賭けがでやっ!となされ、さやかさん家族はそれに勝ったということなのだ。

うちの家族も勝ったのかなあ、と、てくてく階段を降りてきて、よく乾いたふかふかのタオルケットを大事そうに抱えてまたてくてく2階へ登っていく母を見ながらぼんやりと考えをめぐらせる。
お母さんの病気を、さやかさんはお父さんが立ち直るために必要だった「底つき体験」と呼んだ。
私も、あの頃(本に収録されている時期)はあれ(本に収録されていること)が底つき体験だと思っていたけど、まだまだ甘かったということか。けっこうSだね。あなたドSだね、神様。

母の入院中、「神様は乗り越えることのできない試練は与えない」と何人かに言われ(こういうことを言われるあたりが私が私である所以なのか)、神様、私を買いかぶりすぎだよっつーか谷底に突き落としすぎっつーか苦労は買ってでもしろとか今時はやんないんですけどふざけんなよなどと心の中で悪態をつきまくっていた私ですが、結果オーライということかな、とようやく矛を収める気持ちになりました。
だからと言って「今では感謝してます」とか言わないけどね。言うもんかよ。やっぱり厳しすぎたよ神様!

何はともあれ、30年ちょっと生きてきて初めて味わう「おだやかな家族団欒」をしばらく楽しませてもらいます。それが頑張った私へのご褒美なのだ、おそらく。やっぱりハイリスク・ハイリターンだったね。

実録 パパは多重債務者(サイマー)!

桂 みなみ / 合同出版

売れ行き好調のようです。ありがとうございます★聡美より(笑)
by saku_2425 | 2010-06-14 02:18 | うたかた日記
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